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はじめに ~免疫放射線療法とは~
免疫放射線療法は、樹状細胞ワクチン療法と定位的放射線照射/定位照射※(高い精度でがんに集中して放射線照射する)という最先端の放射線治療とを併用する新しいがん治療法です。
従来の放射線治療では、がん病巣のみにピンポイントで放射線を照射することは困難であり、周りの正常な組織にも放射線のダメージが広く及んでしまうため、がんを十分制御できるほどの強力ながん治療ができませんでした。
免疫放射線療法で用いる放射線治療は、がん病巣をピンポイントで狙い撃ちする定位放射線照射と呼ばれる極めて精度の高い治療で、正常な組織をほとんど傷つけずがん病巣を制御することができる、副作用の少ないがん治療になります。
免疫放射線療法は、このような副作用の少ない最先端の放射線治療を用いて目で見えるがん病変をたたき、樹状細胞ワクチン療法で目に見えない細かながんを攻撃するという、副作用は少ないが攻撃力の高いがん治療法になります。
免疫放射線療法(放射線治療+樹状細胞ワクチン療法)の流れ
免疫放射線療法は、放射線治療を行った後に樹状細胞ワクチン療法を行います。
治療期間は放射線治療の期間によりますが、概ね4ヶ月になります。
定位放射線照射/定位照射(stereotactic irradiation; STI)とは
がん病巣に対し、放射線を多方向から集中させる方法です。通常の放射線治療に比較し周囲の正常組織に対する線量を極力減少させることが可能です。定位放射線照射/定位照射では、がん病巣に照射するに際して、治療装置や患者様の固定がmm単位の精度で管理されています。各がん種のへの応用としては、頭頸部(喉頭がん、舌がん、歯肉がん、口蓋がん、頬粘膜がん、口腔底がんなど)、咽頭がん、副鼻腔のがん、甲状腺がんや肺のがん病巣(肺がんや転移性肺がん)に応用されています。また脳の病巣の治療として、動静脈奇形、原発性良性脳腫瘍、転移性脳腫瘍、手術的操作が難しい頭蓋底の脳腫瘍などに応用されています。それ以外の部位に対しても検討がはじまっています。

免疫放射線治療 ケースレポート
大腸がんに対する免疫放射線療法(放射線治療+樹状細胞ワクチン療法)
※姉妹クリニック(セレンクリニック)における症例報告より
局所再発および肺転移を有する進行大腸がん(ステージⅣ)の患者様に対して、最先端の放射線治療である定位的放射線照射/定位照射(高い精度でがんの部分だけに集中して放射線照射する)と当クリニックの姉妹クリニックであるセレンクリニックの樹状細胞ワクチン療法を併用し、がんの消失または縮小、ならびにがん性疼痛の緩和などのQOLの著しい改善を認めた症例
Introduction
がんの標準治療(手術、化学療法「抗がん剤」、放射線療法を用いた保険に適応になっている標準的ながん治療)が無効であった進行大腸がん/直腸がんは、一般的には他の治療の選択肢が無いのが現状である。
本症例は、副作用のため抗がん剤治療を拒否し、標準治療の選択肢がなくなった、局所再発、骨盤内リンパ節転移、ならびに多発肺転移を認めた進行大腸がん/直腸がんの患者様である。協力医療機関において、定位的放射線照射/定位照射でがんをアポトーシスに誘導した後に樹状細胞ワクチン療法を開始、局所再発部位および骨盤内リンパ節の消失または縮小、がん性疼痛の緩和などQOLの著しい改善を認めた。
Case
60歳代女性。家族歴は特記事項なし。
2003年9月町のがん検診で、大腸がん/直腸がんを指摘される。
2003年10月S病院にて腫瘍摘出術。術後に、抗がん剤治療(UFT「テガフール・ウラシル」+少量CPT11「イリノテカン」)を施行。
2005年12月右側下肢神経痛出現。CT、MRI上、大腸がん/直腸がんの局所再発、肺への転移を指摘される。抗がん剤治療を行うも、副作用が強く治療を断念。
2006年1月知人から、樹状細胞ワクチン療法を目的に当クリニックの姉妹クリニックであるセレンクリニックを紹介される。この時、局所再発による右側下肢疼痛により歩行困難、その他強い倦怠感を認めているという状態であった(PS1※)。
2006年3月樹状細胞ワクチン療法を行うための準備として成分採血を行い、樹状細胞の培養を開始した。
2006年4月がんの局所再発部位と骨盤内リンパ節転移部位に定位的放射線照射/定位照射を施行。 2006年4月樹状細胞ワクチン療法を開始。協力医療機関にて、CTガイド下で局所再発部位に対して4回樹状細胞を投与。
左図 2006.2 樹状細胞ワクチン療法実施前。
右図 2006.7 樹状細胞ワクチン療法終了後。がんの再発部位の消失。
Discussion
がんの部位に直接樹状細胞を注入し、そこで免疫反応を賦活させる樹状細胞ワクチン療法(局所樹状細胞ワクチン療法)は、生体内で、がん癌組織に特異的な細胞障害性T細胞(CTL)を誘導し、治療効果を得ようとするがん治療である。樹状細胞はがんに注入された後、近傍のリンパ節へ移動し、T細胞に抗原を提示する。T細胞はこれを認識し、CD8+T細胞はCTLに、CD4+T細胞はヘルパーT(Th)細胞に分化しがん組織を構成する細胞の拒絶に働く。
近年、患者様の末梢血より試験管内で樹状細胞を誘導する方法が確立され、樹状細胞ワクチン療法は多くの施設で試みられるようになった。これまでのがん免疫療法の主流であった非特異的免疫療法(BRM療法、サイトカイン療法、活性化リンパ球療法「LAK療法」など)と樹状細胞ワクチン療法との大きな違いは、樹状細胞によりがん組織に特異的ながん関連抗原を提示されたT細胞は、①認識した抗原特異的に殺細胞作用を発現する事、②全身に波及し遠隔部位の腫瘍にも効果を及ぼす事、③さらに重要なことは自己がん組織に含まれる患者様特有のがん関連抗原を記憶したT細胞による免疫学的監視機構により再発・後発転移の予防効果が期待できる事である。樹状細胞ワクチン療法は、いわゆる自分の組織に対する効果的なワクチン療法といえる。
本症例の経過であるが、樹状細胞ワクチン療法終了後のPET-CTにて、樹状細胞を投与した局所再発部位のがんは消失、樹状細胞を投与していない骨盤内リンパ節転移も消失した。また、腫瘍マーカーであるCEAは治療前18.4→治療後2.6と著明な低下を認めた。一方、肺転移はMixed Responseであった。
PS※については樹状細胞ワクチン療法開始後、2006年5月頃より0となった。初診時は一人で来院するのが困難な状況であったが、治療開始以降、全身状態は著しく改善し、下肢のがん性疼痛も消失、通常歩行が可能となり、一人で通院することがまったく問題なくなるまで改善した。樹状細胞ワクチン療法による副作用は、注入部の炎症による痛みの他、特に大きなものは認められなかった。樹状細胞ワクチン療法終了後も、大腸がん/直腸がんの進行および再発は良好にコントロールされており、日常生活に何の支障もなく、外来フォローアップされている。
以上、本症例は放射線療法と樹状細胞ワクチン療法を併用することにより、副作用を最小限に抑え、また双方の治療の強みを発揮することができた一例である。
※パフォーマンスステイタス
患者様の全身状態の指標。0(無症状・社会生活可能)-4(終日就寝・介助が必要)まで分けられており、進行がんの予後(病気に罹った後の経過)に関係する要素となっています。

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